高橋葡萄園 代表
高橋 喜和さん
1993年 農学部農学科卒業
- Q1
- はじめに、高橋さんが岩手大学に進学された理由を教えてください
現在、私が暮らし働いている岩手県大迫町は私の出身地です。実家は兼業農家をしていたので、将来は家業を継がなければならないと考えていました。それだけではなく、私は子どもの頃から田んぼの手伝いをとても楽しんでやっていたんです。そんな理由から「農業に関わる仕事をしたい」という思いをもって農学部を選びました。岩手大学に進学したのは、実家の農業を継ぐのであれば、同じ自然環境のなかで学んだ方が良いと考えたからでした。
- Q2
- 心に残っている大学時代の思い出があれば教えてください
所属していた農学科では、2年生の夏休みに滝沢農場で1週間の泊まり込み実習がありました。その1週間はとても楽しかったですね。また、当時の農学科では毎年「収穫祭」がありました。学部の1年生から院生の先輩まで、みんなでゲームをしたり、食べたり、飲んだりしたことが良い思い出として残っています。
- Q3
- 高橋さんの大学時代の研究と現在のお仕事との関連については、どのようにお考えでしょうか
大学では、ブルーベリーの研究をしていました。最初は果樹研究室でブルーベリーを育てていると聞いて、ブドウと似ているのかなと思いやってみたいと考えたのがきっかけです。
後からブドウとは全く違うものだとわかったんですが、それはそれとして、大学の講義や研究のなかで得た知識は、今、農業をやるうえでとても役に立っています。基礎知識があると様々な事象が起きたときによく理解できるんです。
やはり大学で学んだことはしっかりと頭に残っていますね。若い頃に吸収したものは自分の土台になっていると実感します。昨日のことはすぐに忘れてしまうのに不思議ですね。
後からブドウとは全く違うものだとわかったんですが、それはそれとして、大学の講義や研究のなかで得た知識は、今、農業をやるうえでとても役に立っています。基礎知識があると様々な事象が起きたときによく理解できるんです。
やはり大学で学んだことはしっかりと頭に残っていますね。若い頃に吸収したものは自分の土台になっていると実感します。昨日のことはすぐに忘れてしまうのに不思議ですね。
- Q4
- 以前は企業で勤務されていたとお伺いしました。企業で働いていた頃と独立した現在との違いはありますか
独立したのは2012年でした。会社に勤めていたときは自分の担当した部門のことだけをやればよかったのですが、独立して自営業になると、経理から製造・販売まですべて自分でやらないといけなくなります。そこは大変なところです。
以前、勤めていたのはワインの会社でした。その会社にはワインについて学ぶためにオーストリアへ留学させてもらいました。1年8カ月滞在しましたが、素晴らしい経験でした。
留学中、言葉は大変でした。ちなみに私は岩手大学で第2外国語にフランス語を選んだのですが、オーストリアの公用語はそれまで触れたことのないドイツ語です。最初の頃は英語でやり取りして、夜には地域でやっていた外国人向けのドイツ語講座に通っていました。
留学中、午前中は授業、午後は実習というスケジュールで、毎日、醸造や栽培の先生の講義を追いかけて過ごしていました。学校の中に実習できる場所があり、ワインをつくり、販売もしていたので、講義がない時間は蔵で作業を手伝わせてもらいました。学生ビザだったので無給でしたが、たまに自分も携わったワインをもらったりして、とても嬉しかったです。
以前、勤めていたのはワインの会社でした。その会社にはワインについて学ぶためにオーストリアへ留学させてもらいました。1年8カ月滞在しましたが、素晴らしい経験でした。
留学中、言葉は大変でした。ちなみに私は岩手大学で第2外国語にフランス語を選んだのですが、オーストリアの公用語はそれまで触れたことのないドイツ語です。最初の頃は英語でやり取りして、夜には地域でやっていた外国人向けのドイツ語講座に通っていました。
留学中、午前中は授業、午後は実習というスケジュールで、毎日、醸造や栽培の先生の講義を追いかけて過ごしていました。学校の中に実習できる場所があり、ワインをつくり、販売もしていたので、講義がない時間は蔵で作業を手伝わせてもらいました。学生ビザだったので無給でしたが、たまに自分も携わったワインをもらったりして、とても嬉しかったです。
高橋 喜和 さん
- Q5
- 高橋さんがワインづくりで大切にされていることはどんなことですか
留学中、醸造の先生の言葉に「ワインの品質はブドウ畑で育つ。ワインをつくるのであれば、農家に任せるのではなく、自ら良いブドウをつくりなさい」というものがありました。また、留学してから1年程経った頃でしょうか。研修で訪れたワイナリーの方からは「ワインは文化である」という言葉を教えてもらいました。「ワインとはつくられるものではなく、生活のなかで自然に生まれるもの。すなわち文化なのです」と説明していました。私はその言葉を知り、気候や土壌などの条件が違う場所の真似ばかりしても駄目だと気が付いたんです。
私は岩手大学では栽培の研究をしていましたし、岩手で育てた経験のある同じ品種のブドウを比べてみても違いが大きいことを認識していました。オーストリアと日本では雨の量も全く違います。こちらの三分の一程度しか降りません。日照時間も違います。オーストリアは夏だと夜8時頃まで明るいのです。そういう地域では病気も少ないですし、ブドウの味が濃くなります。醸造技術に関してはそのまま持ち込めることが多いのですが、ブドウ栽培に関しては、自然環境の条件が大きく異なる日本でそのまま適用することはできません。
当初、私は、ヨーロッパのワインの品質に近づけるにはどうしたらいいのかを常に考えていました。しかし、そうではなく、岩手には岩手のやり方でより良いワインをつくることができる。「ワインは文化である」という言葉の通り、その地域に合った方法で、より良いブドウづくりを目指すことこそが大事だと気づかされました。
ブドウ栽培は大変なことが多いです。病気が出ることも、実が割れやすくなることもあります。とくに昨今では気候変動の問題が深刻です。これまで経験したことがないような暑さが収穫にも大きく影響しています。岩手でも高温障害が出ています。これからは水管理などこれまでとは違った対策をしっかりやっていくしかないのかなと考えています。
私は岩手大学では栽培の研究をしていましたし、岩手で育てた経験のある同じ品種のブドウを比べてみても違いが大きいことを認識していました。オーストリアと日本では雨の量も全く違います。こちらの三分の一程度しか降りません。日照時間も違います。オーストリアは夏だと夜8時頃まで明るいのです。そういう地域では病気も少ないですし、ブドウの味が濃くなります。醸造技術に関してはそのまま持ち込めることが多いのですが、ブドウ栽培に関しては、自然環境の条件が大きく異なる日本でそのまま適用することはできません。
当初、私は、ヨーロッパのワインの品質に近づけるにはどうしたらいいのかを常に考えていました。しかし、そうではなく、岩手には岩手のやり方でより良いワインをつくることができる。「ワインは文化である」という言葉の通り、その地域に合った方法で、より良いブドウづくりを目指すことこそが大事だと気づかされました。
ブドウ栽培は大変なことが多いです。病気が出ることも、実が割れやすくなることもあります。とくに昨今では気候変動の問題が深刻です。これまで経験したことがないような暑さが収穫にも大きく影響しています。岩手でも高温障害が出ています。これからは水管理などこれまでとは違った対策をしっかりやっていくしかないのかなと考えています。
- Q6
- 今回、特典として寄附者へお渡しする3種類のワインについて、ご紹介をお願いします
今回、白ワインは「リースリング・リオン」と「ミュラートゥルガウ」の2種類をご用意しました。どちらも2023年に収穫したブドウで作ったワインです。リースリング・リオンは、酸がしっかりしていて、きりっとした辛口のワインです。ミュラートゥルガウは、辛口ですが、柔らかさのあるワインです。どちらも飲みやすく、食事に合わせやすいタイプになっています。
赤・白セットの赤ワインは「ツヴァイゲルトレーベ」で、こちらはオーストリア原産の品種です。渋みを強くしすぎず、飲みやすく作りました。醤油や出汁など和食にも合うワインです。
赤・白セットの赤ワインは「ツヴァイゲルトレーベ」で、こちらはオーストリア原産の品種です。渋みを強くしすぎず、飲みやすく作りました。醤油や出汁など和食にも合うワインです。
- Q7
- 最後に、2029年に創立80周年を迎える岩手大学へメッセージをお願いいたします
卒業して30年以上経っていますが、このような機会に私のワインを特典として使っていただけることを光栄に思っています。岩手大学は、私が知っている範囲だけでも、たくさん優秀な人材を輩出してきた大学です。より多くの人たちと連携しながら、さらに優秀な人材を社会に輩出していただければと思います。
2024年5月29日(水)、高橋葡萄園(岩手県花巻市大迫町)にて収録